インフルエンザの診断と治療を再考する

インフルエンザの流行する季節になりました。もっとも、どうも今年は流行の立ち上がりが遅く、はたしてどのくらい流行するのやらという感じではありますが。

さて、そのインフルエンザの診断と治療は、最近5〜6年の間に、ずいぶん様変わりしてしまいました。その変化を進歩だと言う医師もいますが、むしろ少しゆきすぎているのではないかと考える医師も増えてきました。

診断のうえでの変化は、「迅速検査」が普及したこと。はなやのどの粘液をとって15分くらいで結果が出るという、それ自体はスグレモノではあるります。今では、インフルエンザの疑いがあればみんな迅速検査を行うのが常識みたいになっています。

では、インフルエンザと診断するのに、迅速検査は絶対に必要なのでしょうか?

そうとは言えません。

臨床的には、インフルエンザの流行期がはじまっており、家族や周囲(保育園・幼稚園・学校など)で最近かかった人がいて、本人の症状や診察所見が典型的であれば、検査するまでもなくインフルエンザと考えられます。

典型的な症状・所見とは、

 急な高熱で発症し、その後に咳やはなみずが出てくる
 初期は熱のわりにのどの赤みが少ない
 咳がひどい
 頭が痛い・関節が痛いなど全身の症状が強い

とくに、ふだん熱を出すことの少ない小中学生年齢の子や成人がこういう症状であれば、可能性が高いといえます。急な発熱でのどが真っ赤ならばむしろ溶連菌、はじめから咳が強く熱があまりはね上がっていなければマイコプラズマが疑われますが、まぎらわしい場合は検査は役に立ちます。

実際にひろく検査が行われているのは、抗インフルエンザウイルス薬「タミフル」の処方が前提になっているからでしょう。薬を出すからには診断を確実にすべき、と考えるからです。

この抗ウイルス薬が広く使われるようになったことが第二の、そして非常に大きな変化です。

しかし、インフルエンザは、もともと薬を飲まなければ治らない病気ではありません。水分を十分にとり、安静を保ち、安易に熱を下げずに様子をみていれば、ほとんどの場合、4〜5日で自然に治るものです。インフルエンザの症状そのものも、かかった人の体力や免疫の状態によっては、きわめて軽いこともあります。熱が低くても、咳がたいして出ていなくても、インフルエンザというだけでみんなが抗ウイルス薬を飲む、というのは、やはりいきすぎでしょう。

タミフルの確実な効果は、熱が下がる時期が1〜2日早まる、ということです。ただしB型ではA型に対するほどの効果はありません。

子どもでは、薬を飲んで熱が下がっても、その後2〜3日はのどやはなのウイルスは減らず、他のひとにうつります。つまり、厳密に言えば熱が下がって3日くらいまでは集団生活には戻れないことになります。咳など、熱以外の症状は、軽くなる人もいますが、かわらない人もいます。

「インフルエンザ脳症」を防げるという証拠はありません。

タミフルには副作用もあります。もっとも多いのは嘔吐や下痢ですが、体温が下がりすぎる、頭痛や幻覚・異常な言動を示す、などの報告もあり、服用後3〜4時間は目を離さないようにすべきと主張する医師もいます。

こうしたことを考えると、一律に検査をして陽性ならみんなが薬を飲むというのではなく、ふだんの健康状態や、本人の症状によって、検査をするか、薬が必要か、を判断していくべきなのだと思います。

なお、これは何度も書いていることですが、インフルエンザの迅速検査は、熱が出て7〜8時間ほどたたないと陽性になりません。熱が出たからといって夜間救急で診断を受けるメリットはなく、翌朝受診すれば十分です。

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2007.1